触診で読み解く栄養不足のサイン
✅ 1. タンパク異化亢進と全身性のハイパーモビリティ(過可動性)
-
背景:タンパク異化亢進とは、筋肉や組織を分解してエネルギーに変えてしまう状態。慢性ストレス、慢性炎症、栄養不良、特に低たんぱく血症のときに起きやすいです。
-
結果として:コラーゲン合成が低下し、関節や筋膜、靭帯の張りが弱くなり、体が「ゆるむ」=全身の可動性が過剰になる(ハイパーモビリティ)。
-
触診ポイント:
-
関節を他動的に動かすと「ふにゃっ」とした印象。
-
関節の引っかかりが弱く、スムーズすぎる。
-
子どものような柔らかさを持つ成人などは要注意。
-
-
疑われる栄養素:タンパク質、ビタミンC(コラーゲン合成)、鉄、銅、亜鉛
✅ 2. 筋線維内の水分滞留(水っぽさ)と浮腫
-
背景:代謝の不全や血漿タンパクの低下により、細胞外液が増えたり、リンパ排液がうまくいかないと、水が組織に滞留します。
-
触診ポイント:
-
筋肉や皮下組織に「むちっ」「ぷにっ」とした水っぽさがある。
-
張っているというより、冷たくて柔らかいゼリーのような質感。
-
押すとわずかに「指の跡」が残るような粘性を感じる。
-
特に下肢(くるぶし、脛)に浮腫が集中しやすい(重力の影響)。
-
-
疑われる栄養素:アルブミン(タンパク質)、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、リンパの排泄に関わるミネラル群
✅ 3. 舌の観察(舌診)
-
舌の痩せ(舌質の細さ・薄さ):
-
慢性的なエネルギー不足、栄養不良、特に鉄欠乏やB群不足を疑う。
-
-
舌の赤み(紅舌):
-
粘膜表面の炎症、つまり亜鉛・鉄・ビタミンB2欠乏などによる修復力の低下。
-
-
舌苔の状態も観察:
-
白く厚い → 胃腸の冷え・消化力低下
-
苔がほぼない → 消化液不足・萎縮
-
✅ 4. 爪の観察
-
薄い爪・柔らかい爪 → タンパク質・ビオチン・鉄・亜鉛不足
-
縦横のボコボコ(縦溝・横溝) → 一時的なストレスや消化吸収不全の履歴(横溝は感染・発熱時などの反映)
-
二枚爪 → 角質(ケラチン)合成の弱化=亜鉛・ビタミンA・B6不足を疑う
-
白い斑点 → 亜鉛不足や外傷
✅ 5. 髪の毛の質感(ミネラル不足のサイン)
-
ギシギシ・パサパサ・切れやすい髪:
-
触ったときに滑らかさがなく、「キュッキュッ」と指が引っかかるような感触。
-
特に亜鉛・マグネシウム・セレン・カルシウム不足を疑う。
-
タンパク不足+ミネラル不足でケラチンの質が落ちる。
-
✅ 6. 目の強膜(白目)の薄さ・青さ
-
白目が青っぽく透けて見える:
-
強膜が薄くなることで、裏側の静脈(青色)が透けて見える。
-
コラーゲン生成不全のサイン。
-
鉄欠乏・銅不足・ビタミンC不足が関与。
-
-
ビタミンC欠乏では毛細血管破れも起きやすいため、結膜出血や目の充血が起こることも。
✅ 7. 虫歯・皮膚の色・質感
-
虫歯が多い・進行が早い → カルシウムやビタミンDの代謝異常/糖の代謝異常
-
肌がくすむ・黒ずみ・黄ばみ → ビタミンB群・鉄・亜鉛欠乏を疑う
-
皮膚の乾燥・べたつき:
-
乾燥=脂質・ビタミンA不足、**べたつき=糖代謝異常(インスリン抵抗性)**の可能性
-
✅ 8. 糖代謝異常の人の「べたつき」
-
触診で手や皮膚がべたつく(汗ではない油分+糖分のような質感)
-
糖の代謝がうまくいかず、皮脂腺の脂質分泌が増加している可能性。
-
代謝の“ベタつき系”=インスリン抵抗性や血糖コントロール不良。
-
触った後に手が軽く「膜を張った」ような感触が残る。
-
🔍補足:触診・視診の統合的なポイント
観察ポイント | 疑われる栄養素/状態 |
---|---|
関節ゆるい | タンパク質・ビタミンC・鉄 |
むくみ・水っぽさ | アルブミン・電解質バランス |
舌の痩せ・赤み | 鉄・B群・亜鉛 |
爪の異常 | タンパク質・亜鉛・ビオチン |
髪のギシギシ | 亜鉛・ミネラル全般 |
白目の青さ | コラーゲン合成障害(鉄・銅・C) |
虫歯・肌のくすみ | ビタミンA・D・糖代謝異常 |
皮膚のべたつき | 糖代謝異常・インスリン抵抗性 |