触診で読み解く栄養不足のサイン

1. タンパク異化亢進と全身性のハイパーモビリティ(過可動性)

  • 背景:タンパク異化亢進とは、筋肉や組織を分解してエネルギーに変えてしまう状態。慢性ストレス、慢性炎症、栄養不良、特に低たんぱく血症のときに起きやすいです。

  • 結果として:コラーゲン合成が低下し、関節や筋膜、靭帯の張りが弱くなり、体が「ゆるむ」=全身の可動性が過剰になる(ハイパーモビリティ)

  • 触診ポイント

    • 関節を他動的に動かすと「ふにゃっ」とした印象。

    • 関節の引っかかりが弱く、スムーズすぎる。

    • 子どものような柔らかさを持つ成人などは要注意。

  • 疑われる栄養素:タンパク質、ビタミンC(コラーゲン合成)、鉄、銅、亜鉛


2. 筋線維内の水分滞留(水っぽさ)と浮腫

  • 背景:代謝の不全や血漿タンパクの低下により、細胞外液が増えたり、リンパ排液がうまくいかないと、水が組織に滞留します。

  • 触診ポイント

    • 筋肉や皮下組織に「むちっ」「ぷにっ」とした水っぽさがある。

    • 張っているというより、冷たくて柔らかいゼリーのような質感

    • 押すとわずかに「指の跡」が残るような粘性を感じる。

    • 特に下肢(くるぶし、脛)に浮腫が集中しやすい(重力の影響)。

  • 疑われる栄養素:アルブミン(タンパク質)、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、リンパの排泄に関わるミネラル群


3. 舌の観察(舌診)

  • 舌の痩せ(舌質の細さ・薄さ)

    • 慢性的なエネルギー不足、栄養不良、特に鉄欠乏やB群不足を疑う。

  • 舌の赤み(紅舌)

    • 粘膜表面の炎症、つまり亜鉛・鉄・ビタミンB2欠乏などによる修復力の低下

  • 舌苔の状態も観察

    • 白く厚い → 胃腸の冷え・消化力低下

    • 苔がほぼない → 消化液不足・萎縮


4. 爪の観察

  • 薄い爪・柔らかい爪 → タンパク質・ビオチン・鉄・亜鉛不足

  • 縦横のボコボコ(縦溝・横溝) → 一時的なストレスや消化吸収不全の履歴(横溝は感染・発熱時などの反映)

  • 二枚爪 → 角質(ケラチン)合成の弱化=亜鉛・ビタミンA・B6不足を疑う

  • 白い斑点 → 亜鉛不足や外傷


5. 髪の毛の質感(ミネラル不足のサイン)

  • ギシギシ・パサパサ・切れやすい髪

    • 触ったときに滑らかさがなく、「キュッキュッ」と指が引っかかるような感触。

    • 特に亜鉛・マグネシウム・セレン・カルシウム不足を疑う。

    • タンパク不足+ミネラル不足でケラチンの質が落ちる。


6. 目の強膜(白目)の薄さ・青さ

  • 白目が青っぽく透けて見える

    • 強膜が薄くなることで、裏側の静脈(青色)が透けて見える。

    • コラーゲン生成不全のサイン

    • 鉄欠乏・銅不足・ビタミンC不足が関与。

  • ビタミンC欠乏では毛細血管破れも起きやすいため、結膜出血や目の充血が起こることも。


7. 虫歯・皮膚の色・質感

  • 虫歯が多い・進行が早い → カルシウムやビタミンDの代謝異常/糖の代謝異常

  • 肌がくすむ・黒ずみ・黄ばみ → ビタミンB群・鉄・亜鉛欠乏を疑う

  • 皮膚の乾燥・べたつき

    • 乾燥=脂質・ビタミンA不足、**べたつき=糖代謝異常(インスリン抵抗性)**の可能性


8. 糖代謝異常の人の「べたつき」

  • 触診で手や皮膚がべたつく(汗ではない油分+糖分のような質感)

    • 糖の代謝がうまくいかず、皮脂腺の脂質分泌が増加している可能性。

    • 代謝の“ベタつき系”=インスリン抵抗性や血糖コントロール不良。

    • 触った後に手が軽く「膜を張った」ような感触が残る。


🔍補足:触診・視診の統合的なポイント

観察ポイント 疑われる栄養素/状態
関節ゆるい タンパク質・ビタミンC・鉄
むくみ・水っぽさ アルブミン・電解質バランス
舌の痩せ・赤み 鉄・B群・亜鉛
爪の異常 タンパク質・亜鉛・ビオチン
髪のギシギシ 亜鉛・ミネラル全般
白目の青さ コラーゲン合成障害(鉄・銅・C)
虫歯・肌のくすみ ビタミンA・D・糖代謝異常
皮膚のべたつき 糖代謝異常・インスリン抵抗性

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