中学校進学〜特別支援学級か通常学級か?パート1〜

こんにちは。

ラーニング・シー臨床心理士の福田です。

秋になると、小学校では就学時健診があり、新年度に入学する子どもたちが、入学予定の小学校で身体検査と簡易の集団知能検査を受けます。

保護者は、子どもたちと離れて、入学に向けて準備することや登校班の説明などを受けます。

私も市職員で教育委員会に勤めていたときは、この時期、各校に回っていました。

 

さて、今回は中学校の話です。

小学校で、特別支援学級に在籍していて、

<中学校に進学するときに通常学級に戻ったほうがいいのか?>

通常学級でないと、高校に行けないのでは?

というご家族の心配です。

特別支援学級に在籍していても、全日制の高校、県立高校や私立高校に進学できます。

栃木県では、県立高校は一般入試で点数が取れていれば、大袈裟に言えば出席日数が0日でも合格します。

私立高校は、出席日数を重視する高校と、まれにそうでない高校とあり、不登校傾向の生徒さんの場合は、後者の高校でなければ合格しないということがあります。(もちろん、不登校傾向の生徒さんの場合は、合格しても通えるかどうかの課題があります)。

さて、特別支援学級に在籍していても、全日制高校を受験、合格しますが、合格するには、3年間の受験勉強が必要です。

 

<3年間の受験勉強は、特別支援学級でできるでしょうか?>

答えは、難しいです。

もしも自分で教科書や動画を見ながら問題を解いて学力を身につけられる生徒さんだったら、特別支援学級で5教科、受験勉強を続けられるでしょう。

(その場合、登校するメリットが何か?在宅自学でもいいのでは?ということにもなりますが)

特別支援学級に、5教科を教える先生が来てくれるカリキュラムが組まれていたとしても、支援学級に在籍する生徒さんたちは学力も学び方も様々で、一律に通常学級の授業ができるわけではありません。

個別指導塾のように、個別に学習を進めるスタイルで、ポイントポイントを先生が教えてくださるか

あるいは、どの子にもわかる内容にした、通常学級の授業を編集した内容で、一斉授業をするか

ということになります。

したがって、自分で5教科の受験勉強ができないなら、5教科の時間割は、通常学級で学ぶ(交流学級)ことが必要でしょう。

 

<生徒さんの学力とご家族の意向に大きなギャップがある場合>

中学校の受験勉強は、量が増し、質的により抽象的な内容となります。

生徒さんの学力は、小3〜4年生くらいで、小6時に当該学年の成績は50点くらいだったとした場合、当該年齢の通常学級で5教科の授業を受けるのは、非常に苦痛でしょう。

時々、ご家族がご本人の将来を心配して、通常学級に籍を移したいと強く望むことがあります。

学校の先生方がいくら心配しても、実際に決めるのはご家族です。

あっけらかんとしてどこにいても自分のペースで過ごすことができるタイプのお子さんでも、次第に、爪噛み、ささくれをむしる、貧乏ゆすり、チック、過剰に笑う、ふざける、友達への関わりが減る、喋らなくなる、帰宅するとゲームに没頭する、家庭で不機嫌になるなど様々な不適応症状が出てきます。

その子によって不適応症状が異なるので、不適応水準がどの程度なのか早期発見をするためにその生徒さんがどんなサインを出すのか、よく知っておくことが大事でしょう。

不適応症状のサインがわかると、入級するしないの方向転換をするきっかけになります。

これが曖昧ですと、ずるずると時間が過ぎ、不適応症状が悪化してしまうことがあるでしょう。

→不適応症状のサインを明らかにしておく

 

<ご家族の理解が得られない時の手立て>

ご家族とご本人が中学校に見学に行き、中学校の先生に相談しましょう。

1)見学

見学先:特別支援学級+通常学級

もしあれば、通級指導教室も。

通常学級の授業の様子を見てもらい、そこでご本人が6時間授業を受けるイメージをしてもらうことが肝要です。

 

2)中学校の先生への相談

相談内容:

  • 卒業後のイメージの共有
  • 支援学級の在籍スタイルのバリエーション
  • 受験するためにどのくらいの学力が必要で、どんな受験勉強が必要なのか
  • そのためには通常学級や特別支援学級でどんなふうに勉強する必要があるのか
  • 先輩生徒の事例 受験先の例

3)強く通常学級への入級をご家族が希望する場合

  1. 不適応症状を明らかにし、その症状がどの水準になったら、方向転換を検討するのか?
  2. 方向転換の選択肢は何か? 年度途中なら特別支援学級への通級? 翌年度の入級?
  3. いつ、適応状況を確認する機会を設けるのか?

確認や見直し時期を決めておかないと、「何かあった時」という曖昧な言葉は、「よっぽのことがあったとき」という意味にお置き換えられ、問題が深刻化してから、あるいは中2の冬や中3のタイムリミットを過ぎてからの問題発覚になりかねません。

また、発達特性のあるご家族の場合、「何かあった時」という曖昧な言葉は、捉えにくいでしょう。

 

もしもうまく適応しているなら

なぜ適応できているのかを明確にすることに大きな価値があるでしょう。

何が適応の助けになったのか、リソースを明らかにしましょう。

それはご本人やご家族の努力を労う素晴らしいチャンスです。

うまくいっていると、せっかくしてくれていたご家族の努力や、ご本人の努力が少しずつ薄れ、いつの間にか、悪循環に転じていることがあります。

労い、価値づけをすることで、その努力が継続されるでしょう。

 

4)頑張って通常学級に在籍する場合

ご本人が頑張るのだから、ご家族のバックアップは通常より多く必要です。

ご家族はどんなことができるでしょうか?

学校では何ができるでしょうか?

個別指導計画の手立ての欄に該当する内容を明らかにしましょう。

これをもって、1ヶ月後、2ヶ月後に点検し、それぞれの努力を労い、讃えることができるでしょう。

 

小学校6年生が、新年度、中学校生活を心地よく、安心して過ごせますように、心よりお祈りしています。

ラーニング・シー

臨床心理士 福田あかり

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