「上下」は分かるのに「前後」は難しい?放デイで試した空間認知プログラムと「振り返れない」身体の秘密
はじめに
指示が通りにくいお子さん、わかっているのかわかっていないのかわからない、列に並べない子のための課題をしました。
今回は、放課後等デイサービスで小学生〜高校生(特別支援学校・中度知的障害)のお子さんたちと一緒に取り組んだ「空間認知(上下・中・前後)」のプログラム実践をご紹介します。
これはフォイヤーシュタインの認知能力強化教材が土台となったプログラムです。
スムーズに理解を深めるためのスモールステップの作り方と、やってみて初めて分かった「前後」を教えるときの身体の使いにくさ(原始反射や分離運動など)についてまとめました。
段階1:まずは「上下」から!提示する場所やモノを変えて定着
まずは全員の理解度を確認することからスタートしました。
1. 概念の確認(全体)
最初は机の上に絵本を置き、「机の上にある?下にある?」と確認しました。
2. 個別チェック(1人ずつ・指示は1つ)
理解度を確かめるため、1人ひとりに違う物品を渡して個別指示を出します。
「ティッシュの箱を机の上に置いてね」
「お皿を机の下に置いてね」
「レモンの模型を……」「鉛筆を……」
3. 場所を変えて汎用化(机 ➔ 椅子)
「机」で上下が理解できたら、今度は「椅子」に場所を変えます。 物品もぬいぐるみやペンなどバリエーションを変えて、「対象が変わっても『上下』の概念が理解できているか」をじっくり確認しました。
バリエーションを変えて何度も繰り返すことが大事!
段階2:「上・中・下」へステップアップ!
「上下」がしっかり理解できたことを確認してから、次は「中(机の中)」を含めた「上・中・下」に進みました。
最初は「中」で少し悩む様子も見られましたが、土台となる「上下」が定着していたため、コツを掴むとすぐに理解できるようになりました!
段階3:大苦戦!「前後」の理解と「身体の使いにくさ」の壁
「上下・中」ができたところで、次に「前後」のプログラムにチャレンジしました。
【取り組み内容】
みんなで同じ方向(ホワイトボード側)を向いて座り、前方に「椅子」、後方に「テーブル」を配置。「自分の前に何がある?後ろに何がある?」と投げかけてみました。
💡 現場で気づいた「振り返れない」問題
ここで、支援において非常に大きな気づきがありました。 子どもたちは「頭だけをくるっと後ろに向けて振り返る」という動きが難しく、身体全体を後ろに向けてしまうのです。
身体ごとクルッと向きが変わってしまうと、自分の「前」なのか「後ろ」なのかが分からなくなってしまいます。
🧠 考察:なぜ「振り返る動作」と「前後」は難しいのか? 「首だけを回して後ろを見る」という一見シンプルな動作には、実は以下のような身体の使い方が深く関係しています。
ATNR(非対称性緊張性頸反射)などの原始反射の統合
首と体幹を別々に動かす「分離運動」のコントロール
振り返ったときにも姿勢を崩さない「体幹のバランス保持」
首と体を別々に動かすことや体幹の保持が難しいと、バランスを取るためにどうしても全身ごと向きを変えてしまいます。こうした身体の使いにくさが、空間認知としての「前後」の理解を妨げる大きなハードルになっていたと考えられます。
【前後を分かりやすくする指導アイデア】
足型(足あとマーク)を用意する: 足型の上に立たせることで体の向きを固定し、「自分の正面と背中」を意識しやすくする。
フラフープ(平らなリング)を活用する: 立ち位置や「前のゾーン」「後ろのゾーン」を視覚的に明示して比較しやすくする。
※列に並んで「私の前・後ろ」も試しましたが、立ち位置の空間把握が難しかったため、上記のような視覚的マークや道具の工夫がとても効果的だと感じました。
⚠️ 最も重要なポイント:最後に必ず「全体復習」をする!
プログラムの最後には、必ず【 上下 ➔ 上中下 ➔ 前後 】をもう一度すべて復習することが定着の鍵です!
なぜなら、新しい概念(前後)を学習すると、さっきまで分かっていた「上中下」を一時的に忘れてしまうことがあるからです。
最後にもう一度全体を通しておさらいすることで、脳の中でそれぞれの概念が整理され、確実な定着(定着化)へと繋がります。
おわりに
空間認知を育むときは、単に言葉を教えるだけでなく、「今、子どもたちの身体がどう動いているか(振り返れるか・体幹が安定しているかなど)」に目を向けることがとても大切だと実感しました。
スモールステップで進める(上下 ➔ 上中下 ➔ 前後)
物品や場所を変えて理解を深める
「前後」には足型やフラフープなど視覚的な工夫を入れる
最後に必ず全体復習をする
放課後等デイサービスや特別支援学級での指導・学習課題の参考になれば幸いです。

